会場風景

1 ここからはじめる ~生きる・つくる・アートの原点に触れる~

障害のある人の創作活動には、表現すること、さらには生きることの原点に触れるような作品が見受けられます。生きることとつくることが等しいような作品は、見る人の心に直接届きます。さまざまな作品との出会いから一歩が始まるはずです。

■出品作家
石栗仁之、大倉史子、大路裕也、大庭航介、熊田史康、中崎強、濱田幹雄、藤岡祐機、横溝さやか、吉川真美


中崎強
1963年年生まれ/埼玉県在住
所属:光の家療育センター
桜の景色や星が瞬く夜景など、色彩の豊かさが印象深い。この情感あふれる風景画は、動かしやすい左足を使って、父親と見に行った思い出の場所を描いている。2001年には二科展に入選している。


横溝さやか
1987年生まれ/神奈川県在住
所属:スタジオクーカ
オレ三世やピ・ヨンジュなど、オリジナルなキャラクターが世界の街を舞台に活躍する。街は華やかな色彩にあふれ、人間や動物たちなど誰もが楽しげに、活き活きとしている。文部科学省より障害者の生涯教育推進のためのスペシャルサポート大使に任命される。


大庭航介
1982年生まれ/神奈川県在住
所属:スタジオクーカ
緻密なパターンで埋めつくされた植物の葉のような形が、強烈な存在感を放っている。その細密なタッチで描かれるモノクロの画面は、1点を完成させるのに2~3ヶ月を費やし、ボールペン数本を使い果す。


藤岡祐機
1993年生まれ/熊本県在住
熊本市現代美術館に出品したのは9歳の時。初めはチラシなどの紙から形を切り出し、その後ハサミ一本で驚くべき櫛のような作品を作り出すようになる。極細のらせん状になった紙は、ときに紙の表裏の色の違いで複雑な模様となる。


濱田幹雄
1956年生まれ/鹿児島県在住
所属:しょうぶ学園
パネル、キャンバス、布、床、壁、と濱田さんが向かう筆先は様々だが、旺盛な創作力で隙間という隙間を縦横のストロークで埋め尽くす。視覚に障害があり、限られた視界の中、大胆に重ねられる色をエネルギーに、小さなその世界は次々に連続する。


熊田史康
1992年生まれ/滋賀県在住
所属:やまなみ工房
幼少の頃から水へのこだわりが強く、外出時にはまずトイレを確認し、水洗を流していた。いつしか水からトイレへの執着に変化し、平面図を描くようになる。10歳を過ぎた頃には段ボールでトイレの立体模型を制作するスタイルが確立した。


吉川真美
1977年生まれ/大阪府在住
所属:アトリエコーナス
長い時間をかけて生み出された作品には、サスペンダーのスカートを着た女の子や、大好きな猫など動物が数多く描かれている。
薄い黒や色の面とキャラクターや文字の形が溶け込み、重層的な絵画となっている。


石栗仁之
1988年生まれ/新潟県在住
所属:きぼう福祉園
びっしりと細い線で埋めつくされた富士山や銀河系。一見すると線で描いた細密な絵画にみえるが、隅にはスタートとゴールの文字があり、全体が巨大な迷路になっている。子どもの頃から迷路に熱中していたという。


大倉史子
1984年生まれ/埼玉県在住
所属:工房集
お気に入りのモチーフを画用紙全面に、時には空間を生かしながらリズミカルに並べていく。一つのモチーフの連続かと思うと、突然変わったり、言葉も添えられたり、幸せいっぱいの大倉さんの世界となる。


大路裕也
1987年生まれ/三重県在住
所属:やまなみ工房
人物や動物をはじめ、多彩なモチーフは雑誌や画集を見て模写している。腕を組み、角度を変え構図を考える様も、丁寧に色を塗り重ねる筆使いも彼独自の美学である。その美学から生まれる作品は予想もつかない形や色へと変化していく。

2 ここからおもう ~多様な「エイジ/レス」を描くメディア芸術~

ここでは、マンガやアニメーション、ゲームやメディアアートなどのメディア芸術作品から、「年齢」や「生きること」と結びつくようなマンガやアニメーション作品を紹介します。これらは、年を重ねることや、現実と向き合うことについて考えさせるだけでなく、多様な表現のあり方も気付かせてくれます。また、凹凸が浮き出る特殊な技法でマンガを印刷することで、直接触れて鑑賞できる「触図(しょくず)マンガ」の制作も試みました。

■出品作家
いがらしみきお、池辺葵、松田洋子、湯浅政明、Debanjan NANDY


いがらしみきお
『ぼのぼの』
主人公であるラッコの「ぼのぼの」や様々な森の動物たちが登場し、「ちょっとヘンな」日常が繰り広げられる4コママンガ作品です。今回は、本作を凹凸が浮き出る特殊なインクを用いて印刷し、触って鑑賞することのできる「触図」にしました。これまでにも「触図マンガ」の例はありますが、いずれも視覚障害者の方にとって、マンガの作品理解に役立つ触図の可能性を探る試みです。


池辺葵
『どぶがわ』
老婆は自分のお気に入りの場所である「どぶがわ」のほとりにある広場で、妄想に耽っています。周囲に暮らす人たちは彼女を不思議に思っていますが、いつしか、誰もが気づいていないところで、老婆も含めてこの地域に暮らす人々同士につながりが生まれ、変化が生じていきます。「老婆の孤独」と「周囲の変化」が直接的には関係していないことで、不思議な幸福感を醸し出しています。


Debanjan NANDY
『Chhaya』
施設で暮らす、初老の男は、亡くなった妻のことが忘れられず、その影に縛られています。ただ、いつかはその束縛に別れを告げなければならない瞬間が訪れます。時間は常に経過し、未来は現在に、現在は過去へと変化していきます。忘れられない過去と折り合いをつけるのは簡単なことではありませんが、思い出がかたちを変えることで、生き続けることがあるのもまた事実です。


松田洋子
『大人スキップ』
病院で突然目が覚めた日野希子(キコ)は、中学2年生の時に事故に遭い、意識が戻らないまま26年が経過したことを知らされます。40歳の自分に戸惑いながらも、病院の清掃員・黒田けいとの支えを受けながら、「良い大人」になることを目指します。「年をとる」という変化は、それが起きる人の年齢によって、意味合いがかなり異なります。年をとることは体だけでなく、心にとっても、日常ではわからないほどゆっくりですが、確実に変化をもたらします。


湯浅政明
『夢みるキカイ』
赤ん坊の子守をしてくれていた空間が、突然電源が切れたように動かなくなってしまいます。赤ん坊は好奇心から外の世界へと飛び出し、様々な未知の体験をしていきます。この作品で描かれている世界は現実にはないファンタジーであり、奇妙な生き物の動きが魅力的です。それと同時に、この世界での出来事からは、私たちにとって生きることとは何かを深く考えさせられます。

3 ここからひろがる ~「いまのわたし」が感じる世界~

私たちは、生活のなかで常に何かに触れ、その感触から様々な情報を得ています。ここでは、「触れて感じ取る力」を使って空間を知覚するプロジェクトを紹介します。それぞれ違った年齢や身体的な特徴を持つ私たち自身は、世界をどのように感じ取ることができるでしょうか。

■出品作家
echo project


echo project
最新の技術や素材を使い、「見ること」以外の方法で、どうやって空間をとらえることができるかを研究している。本作は距離を振動として伝えるセンサーを使い、自分の体をとりまく空間の情報を振動を通じてとらえなおす。

特別展示【おばあちゃん画家−丸木スマ】

丸木スマ(1875-1956)は「原爆の図」で知られる丸木位里の母です。70歳を超えてから位里の妻、丸木俊のすすめで絵を描き始めたスマは、81歳でなくなるまでに700点以上の絵を描きました。身近な動物や花などを自由奔放に描いた生命力あふれる作品は、没後60年以上たった今でも、ますます多くの人を惹きつけています。
協力:公益財団法人原爆の図丸木美術館

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